私は、放課後等デイサービスで、主に発達障害や知的障害がある小学生の療育に関わっています。
直接お子さんと関わったり、親御さんとお話ししたりする中で、こんな困りごとがよく出てきます⇓⇓
「相手の話を聞けない」
「自分が好きなことだけ話し続ける・やり続ける」
「落ち着きがなく、じっとしていられない」
「気持ちを切り替えられない」
「相手が嫌な気持ちになること(チクチク言葉や他害等)をする」
「何度注意しても直らない」
大人の側は、気持ちや時間に余裕がないと、ついつい
「××はだめ。○○しなさい。」
と注意する、という対応だけで済ませてしまいます。
ですが、発達に特性があるお子さんの場合、ただ注意するだけでは効果がない、「何度注意しても直らない」ということが起こってきます。
注意をされても、
◎何と言われたか、そもそも理解していない。
◎注意されたことを、他の場面に応用できない。
◎相手の表情や周囲の状況をうまく読み取れない。
◎注意されたことを忘れてしまう。
これでは、いくら注意をしても直るはずがありません。
ではどうすれば良いか?
そのヒントになるのが「認知機能」です。
なんだか難しそうな言葉ですね。
今回の記事では、「認知機能」のキソについてお伝えしていきたいと思います。
※注:この記事の中で、「直る」という言葉は「不適切な行動(チクチク言葉・他害・集団活動のルールを破る等)を減らす」という意味で使用しています。
「発達障害そのものを治す」「発達障害の特性をなくす」という意味ではありません。
「認知機能」って何?
「認知機能」は、人が周囲の状況を理解して、考えて、行動する、という一連の流れを行う時の、脳の働きのことを言います。
日常生活の中で行う、食べる、歩く、会話する、家事をする、予定を立てる、買い物をする、遊ぶ、勉強する、といったほぼ全ての行動に、この「認知機能」が関わってきます。
例えば、周囲の人とコミュニケーションをとる時には、頭の中でこんなことが起こっています⇓⇓
①理解する…相手の言葉や表情などを読み取る。
「大きな声でしゃべっている」
「顔を赤くして目を吊り上げている」
②考える…相手の言動や前後の文脈などから、相手の気持ちや、自分が取るべき行動を考える。
「この人は怒っているな」
「なんで怒っているんだろう?」
「どうすれば怒りが収まるかな…」
③行動する…リアクションをする。
「全力で謝る」

コミュニケーションの場面で「認知機能」がうまく働かないと、相手を怒らせるつもりがないのに怒らせてしまったり、会話がかみ合わなくなったりします。
コミュニケーション面に限らず、私たちが日常生活を送ることができるのは、色々な場面で「認知機能」がうまく働いてくれているからです。
「認知機能」と発達障害
発達障害の特性があると、脳の仕組みの違いから「認知機能」がうまく働かず、日常生活に困りごとを抱えてしまうことがあります。
「認知機能」の弱さによって起こる困りごと⇓⇓
| ASD(自閉スペクトラム症) | ◎コミュニケーションが苦手 ◎家事が苦手 ◎予定変更でパニックになる ◎予定や優先順位を決められない ◎新しいことが苦手 |
| ADHD(注意欠如多動症) | ◎後先考えず、衝動的に行動する ◎集中力が続かない ◎忘れっぽい ◎忘れ物や紛失が多い ◎やるべきことが後回しになりがち |
| SLD(限局性学習症) | ◎文字を読むのが苦手 ◎文字を書くのが苦手 ◎計算が苦手 |
なぜ、「認知機能」がうまく働かないと、このような困りごとが出てしまうのでしょうか?
「認知機能」の中には、「見る力」「聞く力」「身体の動かし方」「集中力」「記憶力」「考える力」といった様々な力が含まれています。
通常は、その様々な力がバランスよく積み重なって、協調して働くので、状況に合った適切な行動をとることができます。

ですが、発達障害の特性がある人の場合、この様々な力のバランスが崩れてしまいます。
ピラミッドの土台の部分、「見る力」「聞く力」「身体の動かし方」のところがアンバランスなので、上の層をうまく積み上げていくことができません。
その結果、状況に合った行動がうまくできない=困りごとにつながってしまいます。

では、このような困りごとを減らしていくためには、どんなことができるでしょうか?
支援のヒント
方法は、大きく分けて2つ。
①「認知機能」を伸ばす。
特に、脳の発達が顕著な、未成年の発達障害児に効果がある方法です。
その子の課題やレベルに合った活動・遊びを通して、「認知機能」を伸ばしていきます。
お子さんが「楽しい!」「もっとやってみたい!」と積極的に取り組める活動を行っていくことで、「認知機能」を最大限伸ばしていけると考えられています。
「認知機能」を伸ばしていくための具体的な方法については、こちらの記事をご覧ください⇓⇓
②周囲の環境を整える。
こちらは、年齢に関係なく、発達障害の特性で困っている人に効果がある方法です。
本人の特性や「認知機能」の弱さそのものを何とかするのではなく、周囲の環境を整えて「特性があっても日常生活に困らない」状態を目指します。
例えば…
ASDの困りごとへの対応:
◎コミュニケーションが苦手⇒本人にとって分かりやすい方法で伝える。
◎家事が苦手⇒家事の手順をマニュアル化する。ヘルパーや家事代行を利用する。
◎予定変更でパニックになる⇒「予定変更があるかもしれない」と事前に伝える。予定変更があれば早めに伝える。
ADHDの困りごとへの対応:
◎集中力が続かない⇒刺激が少なく集中しやすい場所を用意する。
◎やるべきことが後回しになりがち⇒スケジュールの組み方や指示の出し方を工夫する。
SLDの困りごとへの対応:
◎文字を読むのが苦手⇒スマホで文字の読み上げ機能を使う。
◎計算が苦手⇒電卓を使う。
色々な方法を紹介しましたが、どんな方法があっているかは人それぞれ、オーダーメイドです。
これからも引き続き、「こんな方法もあるよ!」という情報発信をしていきます。



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