療育入門~ビジョン・トレーニング~

療育の話

療育入門第3弾は、ビジョン・トレーニングについてです。

名前の通り、「見る力」を伸ばすためのメソッドで、考える力・運動能力・コミュニケーション力など、様々な力の土台になる大事な力です。

ビジョン・トレーニングって何?

ビジョン・トレーニングは、「見る力」を伸ばすことで、考える力や運動能力、コミュニケーション力なども一緒に伸びていくよ、という方法です。

発達障害がある人の困りごとといえば、
・落ち着きがない
・空気が読めない
・ケアレスミスが多い
・こだわりが強い
・運動が苦手
・手先が不器用
などがあります。
こういった困りごとの原因の一つが、「見る力」の弱さだと言われています。

ビジョン・トレーニングで「見る力」を伸ばすことで、こういった困りごとを解消していくことができます。
「トレーニング」という名前がついていますが、部活動やジムでやるようなきついトレーニングではなく、子どもたちが楽しく取り組めるような内容になっていて、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの療育現場でも取り入れられています。

「見る力」って何?

片目を隠して、C(ランドルト環)のスキマの向きを答える「視力」検査は、健康診断で誰もがやったことがあると思います。
ビジョン・トレーニングで伸ばしていく「見る力」は、「視力」とは別物です。

「視力」は、目で見た情報を脳に正しく届ける力です。
近視や遠視などの眼球の異常や、視神経の損傷などがあると、物が見えにくい「視力が弱い」状態になってしまいます。

「見る力」は、目から入ってきた情報をもとに考えて、行動するまでに必要な力です。
目で見た情報を、頭の中でどう捉えるか?が「見る力」に左右されるのです。
例えば、「ま」「ほ」という2つの文字を見た時に、「見る力」が弱いとどちらも「ま」と読んでしまうかもしれません。
そもそも、それが文字だと気づかない可能性もあります。
また、楽しいことがあって笑っている人を見た時に、「見る力」が弱いと「自分をバカにして笑っている」と間違った捉え方をしてしまうかもしれません。

「視力」が弱い場合は、メガネやコンタクトレンズを使いますよね。
では、「見る力」が弱い場合は、どうすればいいのでしょうか?
その解決方法のひとつが、ビジョン・トレーニングです。

発達障害とビジョン・トレーニング

発達障害の困りごとの背景には、「見る力」の弱さがあると考えられています。
では、「見る力」が弱いと、それぞれの発達障害でどんな困りごとが出てきてしまうのか、見てみましょう。

◎自閉スペクトラム症(ASD)
よくある困りごととして、「空気が読めない」「いつもと違う状況が苦手」などがあります。

「見る力」が弱いと、相手の表情や周囲の状況を正確に見ることができません。
すると、相手の気持ちを考えたり、自分の言動が相手にどう見られるかをうまく考えることができないので、結果的に、空気を読んで動くことはできません。

いつもと違う状況になった時、「見る力」が弱いと、いつもとどう違っているのか?に気づくことができません。
そもそも、いつもと違うことにすら気づかないかもしれません。
そのため、いつもと違う状況にうまく対応できない、いつもと違う場所には行きたくない、となってしまいます。

◎注意欠如・多動症(ADHD)
よくある困りごととして「集中力がない」「早とちりをしてしまう」などが挙げられます。

「見る力」が弱いと、「今見るべきもの」ではなく、好きなものや動くものなど「自分が気になるもの」に視線が向きがちです。
そうすると、勉強など今集中しなければならないことには、どうしても集中できなくなってしまいます。

また、「見る力」が弱いことが原因で早とちりをしてしまうこともあります。
例えば、「リンゴを取って」と言われた時に、たまたま目に入ったブドウを取ってしまいます。
「見る力」が育っていないと、「これはリンゴじゃない。リンゴはどこだろう?」と考えて動くことが難しくなってしまいます。

◎限局性学習症(LD)
限局性学習症では、「読む」「書く」「計算する」といったことが難しくなりますが、「見る力」が弱い場合、特に「読む」「書く」への影響が大きく出てきます。

読み書きをするためには、
・文字の形を見て正しく理解する
・横書きなら左から右へ、縦書きなら上から下へ、視線をスムーズに移動させる
・文字の形を思い出す
・紙を見ながら文字を書く
のように、「見る力」をいろんな形で使っていきます。

当然、「見る力」が弱いと読み書きに大きな影響が出てきてしまいます。

◎発達性協調運動症(DCD)
発達性協調運動症では、「身体の動きがぎこちない」「運動が苦手」「手先が不器用」といった困りごとが出てきます。

「見る力」が弱い場合、例えばボールの動きが見えにくくてキャッチできなかったり、ハードルとの距離感がつかめずうまく飛べなかったり、といった運動の苦手さが出てきます。

また、「見る力」が弱くて、見本や自分の手元を正しく見られない場合、箸の使い方や文字の書き方、工作などの手先を使う作業がうまくできません。

このような困りごとを解消していくための方法のひとつが、ビジョン・トレーニングです。

ビジョン・トレーニング、もっと知りたい!

ビジョン・トレーニングに興味がある、やってみたい、という方は、ビジョン・トレーニングについてもっと詳しく学んでみましょう。

◎書籍で学ぶ
ビジョン・トレーニングについて、ご家庭や療育施設などで取り組める具体的な方法について紹介されている本があります⇓⇓





◎セミナーで学ぶ
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