お盆を過ぎても、まだまだ暑さは続きますね…
さて、前回の記事では、「認知バイアス」と発達障害(ASD、ADHD)の共通点について書いてきました。
今回と次回は、その解決編として、具体的なエピソードとナッジを利用した解決方法についてご紹介していきたいと思います。
今回のケース1とケース2は成人編で、次回のケース3、ケース4は小児編です。
ケース1は実際に合った夫のエピソード、ケース2~4は体験談をもとにした架空の事例です。
ケース1:ASD成人の場合
◎エピソード
2年ほど前の、夫(ASD当事者)のエピソードです。
当時、夫は無職でしたが、そろそろ仕事を探さなければ…と動き始めた頃でした。
私は夫に「障害者手帳の手続きをしてみよう」と何度も提案していました。
手帳があれば、障害者雇用など仕事の選択肢も増えるし、障害者控除や交通費助成といった制度も利用できるので、当時夫が一番悩んでいた「貯金がどんどん減っていく不安」を軽くできるのでは?と思ったからです。
でも、夫の返事は毎回「NO!」
理由は
「よく分からないけど怖い」
「手続きをどうすればいいか分からない」
「なんかヤダ」
「めんどくさい」などなど…
私は、障害者手帳が当時の夫には必要な制度だと思っていたので、どうやって夫を説得しようか…と考えていました。
◎関係がある「認知バイアス」
・損失回避バイアス…障害者手帳を手に入れることで、何かデメリットがあるかもしれない。
・現状維持バイアス…「障害者手帳を持っていない自分」のままがいい。
・現在バイアス…障害者手帳を利用するメリットより、「役所での手続き」という未知への恐怖を避けるほうが優先。
◎対応とその後
ほぼ同時期に、私自身もASDとADHDで精神障害者保健福祉手帳を手に入れました。
そこで、「どうやって手続きしたか?」「障害者手帳を利用してどんなメリットがあったか?」という私自身の体験談を夫に話してみました。
何度も何度も繰り返し…
そうしているうちに、夫も「障害者手帳、案外いいかも」と心変わりしてきました(同調性バイアス)。
そこで、「今度一緒に区役所に行こう」と誘ってみたところ、「一緒に来てくれるなら」とやっと納得してくれました。
手続き・審査の結果、夫も精神障害者保健福祉手帳を手に入れました。
今では、夫も障害者手帳のメリットを感じていて、「手続きしてよかった」と話しています。
「役所での手続き」にも見通しを持てるようになり、先日は一人で手帳の更新手続きをしてきたようです。
ケース2:ADHD成人(Aさん)の場合
◎エピソード
Aさんは、職場で上司に企画書を提出しました。
その企画は、Aさんがずっと「実現したい!」と思っていたものだったのですが、上司は、会社の方針に合わないため、その企画に対して「NO」とAさんに伝えたました。
しかし「この企画を実現したい!絶対成功させる!」と意気込んでいたAさんは、上司の指示を無視して企画をどんどん進めていってしまいました。
◎関係がある「認知バイアス」
・現状維持バイアス…「上司の指示」という新しい情報よりも「自分が考えた計画」を優先してしまう。
・自信過剰バイアス…「この企画を絶対成功させる!」という思いが強く、上司の指示を無視するデメリットについて冷静に考えられなくなっている。
・利用可能性バイアス…「この企画を絶対成功させる!」という強い思いが、「この企画は実行するべきだ」という判断につながってしまっている。
◎対応とその後
Aさんのサポートを担当するスタッフが、上司から相談を受けてその企画についてAさんと話すことになりました。
スタッフがAさんの話をよく聞いてみると、Aさんは「上司はこの企画に賛成している」と思い込んでいるようでした。
スタッフは、まずAさんのその企画にかける強い思いを聞き出し、「いいアイデアですね」と共感を示しました(プライミング効果)。
最後に「ただ、上司が『その企画は進めないように』と話していたと、小耳に挟みましたよ。」と伝えると、Aさんは鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしています(ピーク・エンドの法則)。
スタッフは、この企画についてすぐに上司と話し合うよう、Aさんに助言しました。
その後、Aさんは上司と今回の企画について話し合い、自分が早とちりをしていたことに気が付きました。
上司は、Aさんが興味を持ちそうな仕事をAさんに任せました。
Aさんが元々やりたかった企画とは違うものでしたが、Aさんはその仕事にやりがいを感じて生き生きと働いています。
「認知バイアス」索引(五十音順)
◎現在バイアス:将来のメリットよりも、目の前の利益を重視する傾向。
◎現状維持バイアス:新しい選択肢より、現状維持という選択肢を好む傾向。
◎自信過剰バイアス:自分の判断や能力を実際以上に高く見積もる傾向。
◎損失回避バイアス:利益を得るための行動より、損失を避けるための行動を優先してしまう傾向。
◎投影バイアス:今の感情や状況が将来も続くと過信する傾向。
◎同調バイアス:他人(特に身近な人)と同じ行動をしたくなる傾向。
◎ピーク・エンドの法則:全体の印象が、「感情が高ぶった時」と「終わる時の印象」によって決まる傾向。
◎プライミング効果:最初に受けた印象が、後々まで影響を与える傾向。
◎利用可能性バイアス:すぐに思い出せるものを過大評価して判断する傾向。
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