療育入門シリーズ、今回でいったん一区切りです。
最後のテーマは「脳幹トレーニング」
「え、何それおいしいの?」
そんな声が聞こえてきそうですが…。
少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
発達障害の困りごと、何が原因?
皆さんは「原始反射」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
赤ちゃんの手のひらに触るときゅっと握りこんだり(把握反射)、大きな音にびっくりして両手で抱き着くような動きをしたり(モロー反射)、そんな赤ちゃんの頃に見られる反応を「原始反射」と言います。
本来は、赤ちゃんが生きていくために必要な仕組みなので、通常は遅くても1~2歳頃には見られなくなります。
ですが、人によっては小学生になっても(中には大人になっても)原始反射が残っていることもあり、それが原因で日常生活に困りごとが出てきてしまうことがあります。
その困りごとというのが、発達障害の特性として挙げられるものばかり。
例えば、次のようなものがあります⇓⇓
モロー反射
●どんな反射?…危険から身を守るための反射。身体の揺れ(特に落下する動き)や大きな音、強い光などを感じると、両手を広げて目の前の人に抱き着こうとする動きがみられる。
●どんな困りごとが出てくる?
◎感覚過敏
◎ストレスや環境の変化に弱い
◎怖がり
◎ストレスにより免疫力が下がり、風邪をひきやすい
把握反射
●どんな反射?…赤ちゃんの手のひらに指で触れると、きゅっと握り返す。手の動かし方を覚えたり、握力を高めたりするための反射。
●どんな困りごとが出てくる?
◎手先が不器用
◎手のひらの触覚過敏
◎文字を書くのが苦手
◎ボールを投げるのが苦手
対称性緊張性頸反射(STNR)
●どんな反射?…ハイハイの動きをサポートするための反射。上を向くと、肘が伸びて膝が曲がる。下を向くと、肘が曲がって膝が伸びる。
●どんな困りごとが出てくる?
◎姿勢が悪い
◎運動が苦手
◎文字を書くのが苦手
非対称性緊張性頸反射(ATNR)
●どんな反射?…手の動かし方、手と目の協応(対象物を目で見ながら、手でうまく操作すること)を練習するための反射。顔が右を向くと、右側の手足が伸びて、左側の手足が曲がる。
●どんな困りごとが出てくる?
◎文字の読み書きが苦手
◎動くものを目で追ったり、目で見て探し物をしたりすることが苦手
◎右手を身体の左側へ、左手を身体の右側へ、とクロスさせる動きが苦手。ボールを投げたり、テニスなどのラケットを振る動きが苦手。
探索反射
●どんな反射?…赤ちゃんが母乳を飲めるようサポートするための反射。口元に触れると唇が開いたり閉じたりする。
●どんな困りごとが出てくる?
◎偏食
◎口周りの感覚過敏
◎食べ物以外のものを口に入れたがる
バビンスキー反射
●どんな反射?…足の裏を指でなぞると、足の指がパッと開く。
●どんな困りごとが出てくる?
◎靴下をはくのを嫌がる
◎じっとしているのが苦手
◎つま先で歩く
◎運動が苦手
脊椎ガラント反射
●どんな反射?…背中の右側をなでると、右側の肩~腰にかけてがきゅっと縮まる(左側も同様)。
●どんな困りごとが出てくる?
◎集中力がない
◎落ち着きがない
◎姿勢が悪い
◎触覚過敏
どうして、原始反射が残っているの?
原始反射は、赤ちゃんが危険から身を守ったり、身体の動かし方を練習したりするために必要なものです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ大脳(考えたり学習したりする脳)が育っていないので、自分で考えて意図的に体を動かす事ができません。
そのため、脳幹(心臓の動きや呼吸のコントロールなど、生きることを最優先する脳)に「原始反射」というプログラムがあり、赤ちゃんの成長をサポートしてくれています。
原始反射は、何度も繰り返し使うことで「たくさん使い切った!もう原始反射がなくても大丈夫!」という状態になれば、自然に消えていきます。
ですが、原始反射を使い切らないまま大きくなってしまうと、原始反射が大脳の働きを邪魔してしまうのです。
その結果、感覚過敏や落ち着きのなさ、読み書きの苦手さなど、発達障害でよく見られる困りごとが出てきてしまいます。
どうすれば「原始反射」をなくせるの?
原始反射をたくさん使って、使い切ることで、原始反射が出なくなり、発達障害の困りごとが軽減されていきます。
原始反射を使い切る方法のひとつが「脳幹トレーニング」です。
では、具体的にどんなことをすればいいでしょうか?
●具体的な取り組み(関連する原始反射)
●全身グーパー(モロー反射)
しゃがんで小さく縮こまる(グー)動きと、手足を大の字に大きく開く(パー)動きを繰り返します。
音楽に合わせて動いたり、チョキの動きも追加してじゃんけん勝負をしたりすると、楽しく取り組めます。
●工作・感触遊び(把握反射)
色んな触り心地のものに触り、指や手をたくさん動かします。
最初は、ベタベタしたものや細かい作業を嫌がりますが、お子さんが楽しく集中して取り組めるものから始めて、少しずつレベルアップしていきましょう。
●くまさん歩き(STNR)
四つ這いで部屋中を歩き回ります。
レースにして速さを競ってもいいですし、お手伝いとして床の雑巾がけをする方法もあります。
●手足のクロス運動(ATNR)
赤と青のマーカーを用意して、「赤は右手(右足)、青は左手(左足)」とルールを決めます。
赤と青のマーカーにタッチしたり、マーカーの上を歩いたりして、手足をクロスさせる動きをたくさんしてもらいます。


●お口のマッサージ、歯ごたえのあるものを食べる(探索反射)
お子さんが嫌がらない範囲で、口周りをたくさん刺激していきます。
マッサージは、大人の手のひらでお子さんのほっぺを優しくマッサージします。
自分の両手でほっぺを挟み、「あっちょんぶりけ!」ポーズをしても面白いです。
歯ごたえのあるものは、グミやハイチュウなど、お子さんが好きな味のものを用意しましょう。
丸飲みすると喉に詰まる恐れもあるので、よく噛んで食べるようお子さんに声掛けしましょう。
●コチョコチョ遊び(バビンスキー反射、脊椎ガラント反射)
名前の通り、くすぐりっこをして遊びます。
お子さんが嫌がらない範囲で、楽しく取り組んでいきましょう。
脳幹トレーニング、もっと知りたい!
脳幹トレーニングや原始反射についてもっと知りたい方は、こちらの本もおすすめです⇓⇓



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