今回は、
・ASD(自閉スペクトラム症)の診断
・ASD(自閉スペクトラム症)の治療
の2本立てです。
そもそも、ASDって何?という方は、前回の記事をご覧ください。
「ASD(自閉スペクトラム症)とは? その1|アミの発達障害日記」
ASD(自閉スペクトラム症)の診断
日本の病院・クリニックでASDの診断基準として使われているのは、“ICD-10” と “DSM5” です。
ICD-10は、世界保健機関(WHO)が作った診断基準で、精神疾患だけではなく内科や外科などすべての分野の疾患について書かれています。
国や地方自治体では、ICD-10を正式に採用しているので、例えば障害者手帳を申請するなど福祉サービスを受ける時には、ICD-10の診断名が必要になります。
ICD10では、ASDのことを「広汎性発達障害」と表記しています。
広汎性発達障害の中には、「自閉症」「アスペルガー症候群」などが含まれています。
DSM5は、アメリカ精神医学会が作った診断基準で、精神疾患についてだけ書かれています。
DSM5は2013年に発表されましたが、この時初めて「自閉スペクトラム症」という言葉が使われました。
英語では、ASD(Autism Spectrum Disorder)です。
日本語版はまだ出ていませんが、ICDの最新版 “ICD11” でも、広汎性発達障害が「自閉スペクトラム症(ASD)」という表現に変わっているようです。
また、「発達障害」という言葉も、DSM5では「神経発達症群」に変更されています。
ただ、世間一般的にはまだ「発達障害」という言い方のほうが伝わりやすいかと思うので、このブログではしばらく「発達障害」という表現を使っていきます。
病院・クリニックでASDの診断をする時には、問診やいくつかの検査を行います。
◎問診
現在、日常生活でどんな困りごとがあるか、幼少期に発達が気になるところがあったかなどを確認します。
◎知能検査
知的な遅れがあるかどうかや、脳機能の偏り(考えたり覚えたりする力のうち、何が得意で何が苦手か)を見ます。
WISC(対象年齢:5歳~16歳11か月)やWAIS(対象年齢:16歳~90歳11か月)などが使われます。
◎ASDの特性の強さを見る検査
AQテスト、ADI-R(自閉症診断面接)、ADOS-2(自閉症診断観察検査 第2版)、CARDS2(小児自閉症評定尺度 第2版)などの検査があります。
これらの検査をして、次のような基準に当てはまる場合、ASDと診断されます。
◎「Wingの三つ組」の特性(①社会性の障害、②コミュニケーションの障害、③常同的・限定的な行動)が見られること。
◎上記の特性が、幼少期からあること。
◎その特性によって、日常生活(家庭・学校・職場)に支障が出ていること。
ASD(自閉スペクトラム症)の治療
現在、ASDを根本的に治す治療はありません。
次のような流れで、自分の特性と長く付き合っていくことになります。
①自分の特性を知る。
②自力で対処できることは対処する。
③自力で対処できない部分は、周囲のサポートや福祉サービスなどを利用する。
幼児期~学齢期のお子さんの場合は、療育がメインになるかと思います。
療育とは、特性からくる日常生活の難しさを軽減できるように練習をしたり、特性との程よい付き合い方を身に着けたりするための取り組みです。
例えば、自治体が運営している発達支援センターのような所(自治体によって名称は異なります)や児童発達支援(未就学児対象)、放課後等デイサービス(小学生~高校生が対象)などで、療育を受けることができます。
施設や事業所の体制によりますが、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)、公認心理士(CP)といった療育の専門家に療育をしてもらったり、家庭で取り組める方法を提案してもらったりできます。
療育の方法には、次のようなものがあります。
◎感覚統合
◎ソーシャル スキル トレーニング(SST)
◎ペアレントトレーニング
◎応用行動分析学(ABA)
◎TEACCHプログラム
◎ビジョントレーニング
◎コグトレ
◎脳幹トレーニング etc…
それぞれの内容については、別の記事で触れていきたいと思います。
青年期以降は、必要に応じて周囲のサポートや福祉サービスなどを利用しながら、特性との程よい距離感を身に着けていくことになります。
ASD当事者が社会でうまく生きていくための工夫や、どんな福祉サービスが利用できるかなど、詳しくは、ブログの他の記事で書いていきたいと思います。
ただ、中には自助努力や周囲のサポートだけではどうにもならない…というケースもあるかと思います。
例えば、体質的に睡眠時間が不規則だったり十分眠れなかったりして生活リズムが乱れる、うまくいかないことばかりで落ち込んで、何もやる気が起きない、といった状態であれば、医療の力を借りることが必要かもしれません。
心療内科や精神科を受診して、睡眠の問題に対しては睡眠薬、気持ちの落ち込みに対しては抗うつ薬など、症状に合わせた薬を処方してもらいましょう。
まずは、体や心の状態がある程度落ち着かないと、頑張れるものも頑張れません。
それでは、今日はこの辺で。
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