今回のテーマは、ASD(自閉スペクトラム症)です。
ASDは、一言で言うと「社会性や人とのコミュニケーションなどに苦手さがある状態」です。
ASDはよく「三つ組の障害」とも言われます。
①社会性の障害
②コミュニケーションの障害
③常同的・限定的な行動
この3つの特徴は、提唱した人の名前を取って「Wingの三つ組」とも言われています。
では、①~③についてもっと詳しく見ていきましょう。
①社会性の障害
相手の気持ちを理解したり、共感したりすることが苦手で、周囲の人と良い関係を築くことが難しい傾向があります。
「空気を読む」ということが難しく、例えば、相手が忙しそうにしていても構わず話し続けてしまったり、集団行動をしなければいけない場面でひとりマイペースに動いてしまったり、順番待ちの列に気づかず割り込んでしまったり、といったことが起こることがあります。
②コミュニケーションの障害
言葉を文字通りにしか受け取れず裏の意味に気づきにくい、非言語的な情報(表情や視線、声のトーン、話す速さなど)から相手の気持ちを推測することが難しい、といった特徴があります。
例えば、相手が言った冗談を真に受けてしまう、相手が怒っていることを暗に伝えても気がつかない、言葉はたくさん知っているのになぜか会話が噛み合わない、といったことが起こり得ます。
ASDと診断される人の中には、「知的障害とASDどちらもある人」と「知的障害はなく、ASDの特性がある人」がいます。
知的な遅れがなくて、言葉や知識をたくさん知っているような人でも、上記のような特徴がみられることがあります。
③常同的・限定的な行動
同じ動作を繰り返したり、特定の物事に強く興味を示して他のことには無関心、といった様子が見られることがあります。
また、物の見え方や聞こえ方が他の人とは違っている、という特徴もあります。
他の人と感じ方がどう違うかは、人によって様々です。
◎ヒトが感じ取れる五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)のうち、どの感覚に違いが出ているか
◎その感覚が強すぎるのか(過敏)、弱すぎるのか(低反応)
こういった視点で、他の人との感じ方の違いを見ていくことになります。
視覚
過敏…蛍光灯や太陽の光がまぶしすぎて目を開けられない、人込みなど目から入る情報が多いと疲れてしまう。
低反応…目の前にある物に気づくことが難しく、探し物が見つからなかったり、視界に入った物に反応するのが遅れたり(歩いていて人や障害物にぶつかるなど)してしまう。
聴覚
過敏…花火、ピストル、人の声、車や電車の走行音、動物の鳴き声など、特定の音が苦手で、耳をふさいだりその場から離れたりしてしまう。
低反応…相手が話している声をうまく聞き取れなかったり、聞こえてきた音に素早く反応すること(クラクションに気づいて車をよけるなど)が難しかったりする。風船を割るなど、大きな音を出して遊ぶことを好む。
触覚
過敏…少し触れられただけでくすぐったい、または痛いと感じる。服についているタグや、特定の服の素材を嫌がる。
低反応…ぶつかったり、けがをしたりしても気づかない。
嗅覚
過敏…ほんの少しのにおいでも「くさい」と感じる。特定のにおいが苦手。
低反応…強いにおいを好む。普通の食事が味気なく感じられ、食事への興味が薄い。
味覚
過敏…普通の味付けでも「しょっぱすぎる」「甘すぎる」と感じる。特定の味が苦手。
低反応…濃い味を好む。普通の食事が味気なく感じられ、食事への興味が薄い。
これらの特性が出てくる原因は、遺伝や妊娠中の環境などによって、生まれつき脳の仕組みが他の人と少し違っているから、と考えられています。
子どもが生まれてから、育っていく環境(例えば、親の接し方やしつけ方など)はASDの原因ではないと言われています。
言葉で色々書いていくと、情報量がとても多いですが、ASDと診断された人全員が、全く同じ特性を持っている訳ではありません。
むしろ逆で、同じASDという診断を受けていても、特性は人によって大きく異なります。
「自閉スペクトラム症」という名前がついている理由も、そこにあります。
「Wingの三つ組」の特性がある人を、「特性が強く出ている人」から「特性が少しだけ出ている人」まで順番に並べていくと、「ASD」という診断がつく人から「定型発達」の人(※ここでは、ASDではない人の意)までスペクトラム(連続体)になっています。

「ASD」の人と「定型発達」の人の間には、「多少特性はあるが、ASDの診断はつかない」人たちもいて、テストの点数のように「○○の数字がいくつ以上だとASD」「この特性があるから必ずASD」と明確に分ける基準があるわけではありません。
では、「ASD(自閉スペクトラム症)」の診断は、どんな基準でつくものなのでしょうか?
続きは次回のブログでお話していきたいと思います。
次回予告
「ASD(自閉スペクトラム症)とは? その2」
・ASD(自閉スペクトラム症)の診断
・ASD(自閉スペクトラム症)の治療
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