今回は、LD(学習障害)についてです。
LDの捉え方は、行政・教育の世界と医学の世界で若干違いがあります。
行政・教育の世界では、LD(Learning Disabilities)を次のように定義しています。
「学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものである。学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接的な原因となるものではない。」
(第1部 概論(導入):文部科学省 より引用、下線はアミが付加したもの)
医学の世界では、DSM5やICD10の診断基準を元にLDの診断を行います。DSM5ではSLD(Specific Learning Disorder)を次のように定義しています。
①文字の読み方を間違える、または文字を読むのが極端に遅い。
②文字(単語~文章)を読んで、内容を正しく理解することが難しい。
③文字を書くときに、文字の形を間違える。
④文章を書くことが極端に苦手。
⑤数字の概念や基本的な計算の理解ができない。
⑥文章題を解く、自分で式を考えるといった数学的な思考や推論が難しい。
①~⑥の症状のうち、ひとつ以上に当てはまり、これらの症状の原因が、知的な遅れや他の発達上の課題では説明がつかない場合に、SLDと診断されます。
※①②は読字障害、③④は書字障害、⑤⑥は算数障害に分類されます。
なお、医学の世界では「聞いて理解すること」「言葉を話すこと」だけが苦手な状態を「特異的言語発達障害(SLI : Specific Language Impairment)」に分類し、「限局性学習障害(SLD)」とは分けています。
行政・教育の世界の定義と、医学の世界の定義を図でまとめると、次のようになります。

今回は、医学の世界のLD(読字障害、書字障害、算数障害)について書いていきます。
LDは、国語や算数など、教科学習が本格的に始まる小学校入学以降に問題となることが多いです。
特に読字障害や書字障害は、教科書を読めない、ノートが取れない、テストで答えを書けないなど、他の教科にも影響が出てしまいます。
「LDが原因で授業について行けない」という状態を放置してしまうと、学習意欲や自己肯定感の低下など、二次的な問題につながることもあります。
早い段階で気づいて、専門機関や専門家に相談しましょう(早期発見・早期療育)。
LDの原因
LDの原因はこれ!というはっきりとしたものは、まだ特定されていませんが、脳の働きに何らかのエラーが生じていると考えられています。
・「音韻意識」の問題…単語の音の組み合わせを、間違えて捉えたり覚えたりしてしまうことがあります。
例えば、「テレビ」が「テネビ」「テビレ」になったり、「シートベルト」が「シーベルト」になったりします。
・「視覚的認知(見る力)」の問題…全体をパッと見て把握する、細かいところをよく見る、形や数を覚えて後から思い出すなど、「見て理解すること」や「見て覚える」ことに何らかの課題がみられることがあります。
・「目と手の協応」の問題…いわゆる「不器用さ」がある状態です。
文字を書くためには、手で鉛筆を持って、力加減や動かす(書く)方向などを細かくコントロールする必要がありますが、それが苦手でうまくできないというケースもあります。
・「自動化」の問題…「音の認識」「形の認識」「言葉や数の想起」など、一つ一つはできるけれど、読み書き計算のためにすべてを一気にやる時に、つまずいてしまいます。
LDの治療
読み書き計算ができるようになるために、色々な療育の方法が考えられていますが、効果は個人差が大きいです。
療育を受けて読み書き計算の力を伸ばしながら、必要なサポートや代替手段を使って生活していく、というのが現実的かと思われます。
今回は、サポートや代替手段について紹介していきます。
・デジタル教科書…従来の紙の教科書を、タブレットなどで見られるようにしたものです。
紙面の拡大や機械音声読み上げ、自動でルビを振るなどの機能があります。
・PCやタブレットの音声読み上げ機能…Windows、iOS、Chromeそれぞれに、文章を読み上げてくれるシステムがあります。
ここでは、iOSの音声読み上げ機能について解説している動画を紹介したいと思います。
説明がとても分かりやすいです。
・PCのキーボード入力やタブレットのフリック入力…読むことはできるけど書くことは苦手、という場合に使える方法です。
・録音アプリ…他の人の話を聞きながらメモを取る、という場面でメモ代わりに使うことができます。
もし、録音の内容を文書でまとめる必要がある時は、文字起こしの機能があるアプリを使うこともできます。
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